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2007年09月 アーカイブ

2007年09月08日

1981年以前の木造住宅は


手抜き工事の危険性


 そのまま放っておくと、危ないと思われる建物に共通するのは、1981年以前の木造住宅です。それは、新耐震基準が制定される以前の建物ということになります。

 それから建物の中でも特に耐震性が深刻なのは、73年前後、オイルショックの時期に建てられたものです。当時は建築資材が大いに不足しており、セメント1袋、クギ一本を調達するのも難しかったそうです。

 解体した古家から出た、折れ曲がったクギを大工さんが拾い集めていたほど、資材が無かったといいます。当然、建築資材の質を落として施工しなくてはいけません。耐震の基準もまだ低かったので、外からは見えにくい家の骨格部分で手抜きがなされている可能性が高く、非常に危険な状態だといえるでしょう。

新耐震基準をクリアすれば


 95年の阪神・淡路大震災で被害を受けた住家は、全壊10万4906棟、半壊14万4274棟、一部破損26万3702棟と膨大な数にのぼります。

 また、被災地域内で81年以前に建てられた家屋の実に90%が全壊、または半壊したというのは驚くべき事です。ですが、81年以降に建てられた家屋の倒壊は、それほどでもなかったようです。

 あるグループが、そのような倒壊家屋の実態をもとにして、あるシミュレーションをしました。仮に被災地の住宅全てが81年の新耐震基準をクリアしているとしたら、5500人以上だった圧死者数は200~500人くらいですんだだろうというものです。

 新耐震基準をクリアした住宅に住むようになれば、大地震で死ぬ確率が9割も減るというのはすごいことです。ですが、現在も全国で約1000万戸の住宅が新耐震基準をクリアできていないそうです。

 81年以前に建てられた家屋に住んでいる方は、すぐにでも耐震診断を受け、必要な耐震補強をしたほうがいいでしょう。

地盤は安全か


ボーリング柱状図


 どれほどしっかりした構造の家屋でも、地盤の悪い土地の上に建っていたのでは、大きな地震が起きたらひとたまりもありません。では、自分が住んでいる地盤について知るには、どうすればいいのでしょうか。

それには、まず地元の役所の建築課に行って調べてみるのがいいでしょう。近隣でビルやマンションの工事があれば、地盤調査のために「ボーリング柱状図」を作って提出しているはずなので、それを見せてもらいましょう。

ボーリング柱状図とは、ボーリングデータを示した図表で、深度層ごとに地質、N値、地下水位などの地質の性状を表すものです。これは、業者に直接頼んで見せてもらうこともできます。

古い住宅地図をチェック


また、図書館へ行って古い住宅地図をチェックするのもひとつの方法です。そうすれば、自分が住んでいる土地は、昔どのように使用されていたのかが分かります。

例えば、土砂などが堆積して出来た沖積層と呼ばれる地層が厚くて軟弱な地盤では、地震による振幅が大きくなり、家屋の被害は想像以上に大きくなります。海岸や埋立地は液状化によって被害が拡大し、岸に隣接した土地はしっかりした擁壁が施工され、土の中の余分な水を排出する水抜きパイプが設置されてないと崩壊の危険にさらされます。

地盤沈下は、その地域の地下水位が下がって起きる広域地盤沈下と、局所的に起きる不同沈下があり、どちらも地震では大きな被害が発生します。

土地購入前なら注意することもできますが、現在住んでいる家の地盤に致命的な欠陥があって、すでに家が建っている場合、地盤改良工事は難しく、費用も高いものになります。やはり、専門家に相談してみるのがいいでしょう。 

シロアリ対策


シロアリが発生しにくい環境を


 木材を食べるシロアリをそのまま放置していたら、家の強度は限りなくゼロに近づき、それだけで倒壊の危険があります。ですが、業者に頼んでシロアリを駆除すればそれでいいのか、というとそうでもありません。

 確かにシロアリは全滅したかもしれませんが、シロアリに食べられた土台や柱はそのままです。つまり家の強度は落ちたままなので、耐震補強の工事は早急に行わなくてはいけません。

 家屋がまだ、シロアリに襲われていなければ、まずシロアリが発生しにくい環境を作りましょう。

庭や家の周辺に腐った木、枯れた木、発砲スチロールなどシロアリの食べ物になりそうなものを放置しないようにしましょう。家のまわりにシロアリがつきやすいものがあると、まずそこで増殖し、次に家を襲う傾向があるからです。

薬剤散布処理


 また、床下の湿度を下げるために換気を工夫したり、床下調湿炭などを用いてシロアリにとって棲みにくい床下環境を作ることも大切です。新たに家をつくるなら、土台や柱にヒノキやヒバ材を使用するのもいいでしょう。

 あと、シロアリ予防のための薬剤散布処理もあります。しかし毒性の強いものもあり、化学物質に敏感に反応する体質の人には深刻なダメージを受けることもあります。

薬剤散布の場合は、信頼できるシロアリ駆除業者か、「社団法人日本しろあり対策協会」へ問い合わせてみましょう。過去の地震で、シロアリが原因で家屋が倒壊したケースが多いことを考えても、シロアリ対策は重要なものです。

1階が駐車場の住宅


壁も柱もない開口部に注意


 日本は高温多湿の気候なので、元来、住宅は風の通る開放的な造りをしていました。南側に大きな掃き出し窓があり、和室の続き間があるような典型的な純和風の住まいは建具の数も多く、その分壁の量が少なく造られています。

 ですが耐震性はバランスのよい壁の配置と壁の量がポイントです。これまでの純和風の住まいのように壁が少なく南側に大きな開口部があると、建物全体の壁のバランスは大きく崩れます。

 阪神・淡路大震災では、道路面の1階に店舗併用住宅も多く倒壊しました。店の入り口側には壁も柱もなく、まったくの開口部で、南に大きな窓のある和風住宅と同じことです。これほどバランスの悪い建物はなく、地震で大きく動く水平力に対抗する術はありません。

使い勝手と安全は矛盾することも


 近頃、狭い敷地の有効利用をはかり、1階を駐車場にした3階建ての家がありますが、車をスムーズに出し入れするために1階の正面は壁がなく、大きな開口部となっています。 分譲住宅では間口を狭くして奥行きの長い間取りに無理やり駐車スペースをとっているのも気がかりです。

 現行の耐震基準をクリアするためには、1階に開放空間を造るかわりに、ほかの耐力壁で補強はされているはずですが、それでもこうした構造の建物はバランスが悪く、不安は残ります。

 地震の横揺れに対しては、建物の壁はバランスよく強い壁が多ければ強く、少なければ弱くなることはわかっています。家の使い勝手と安全は矛盾しあう面もあるようです。

備えること


建物が倒壊しないことが前提


 建物の耐震性は命拾いできれば良いというものではありません。被害はあったとしても、なんとか使い続けられる家でなければ再建しなくてはいけません。そういう意味でも、備えというものが必要になってきます。

 家屋が倒壊するか、もちこたえられるかは最初の1分間で決まると言われています。いざというときのために、水、保存食、医薬品、懐中電灯などを用意し、地域の防災訓練にも積極的に参加しても、自分の家が倒壊し、その下敷きになってしまったら、全く意味をなしません。

 防災には順序があります。建物が倒壊しないこと、これが全ての前提となるのです。また、神戸でも中越でもそうですが、家が倒壊しなければ、生活の再建は意外とスムーズに進むものです。

 ところが死亡したり大きなケガはまぬがれても、家が倒れてしまうと生活の再建は非常に困難です。命を守り、生活を守るためには防災グッズだけでなく、家の耐震診断が必要です。

耐震診断の相談


 耐震診断の疑問などは、現在住んでいる自治体の窓口に相談してみましょう。また、耐震診断の相談にのってくれる設計事務所もあります。設計事務所の団体である、「建築士事務協会」は、どの市区町村にも支部があるはずです。

 ただ、相談先の選定は注意を必要とします。最近はあたかも公的な団体やNPOを名乗って、法外な料金を請求するグループも存在します。

ですから、少々面倒でも自治体に相談するか、建築士事務所協会のような社団法人格の団体を通して業者を探すようにしたほうがいいでしょう。

正しい業者選びを


訪問セールスに注意


 最近、耐震リフォームがらみのトラブルが増えています。地震で家が倒壊するのではないかとという不安につけ込む悪質業者は多いものです。そこで、ここでは耐震診断を依頼するとき、悪質業者を見分けるポイントを紹介していきます。

 まず、最も危ないのは「訪問セールス」です。点検や簡単な修理を装いますが、こちらが呼ばないのに勝手に来た場合は全て訪問セールスです。

 訪問でない場合でも、まずは相手の資格を確認しましょう。訪問セールスや電話セールスの場合、家に伺うのは大体、営業担当です。その営業マンが「私が調査し、建築士が耐震診断します」と言ってきたら注意が必要です。

 診断業務は耐震診断の資格を有する一級建築士などが直接実施するのが筋です。現場で耐震データを集めるには、資格と経験のある技術者が見落としのない調査をしなければいけません。

実績があるかどうか


 また、耐震診断について知識と経験があるかをチェックしましょう。簡易診断、一般診断、精密診断、はどこが違うのかを説明できないようなら、知識不足、経験不足なおで信頼できません。

 その業者が悪質でなく、資格を持っていても実績がないと安心できません。そこで、業者に過去に行った診断報告書を見せてもらい、その後どういった対策を実施したのか具体的な説明を求めましょう。もし、診断報告書を見せず、説明も曖昧だったらその業者とのつきあいは控えたほうがいいと思われます。

 そして、悪質業者は契約を急ぎがちで、すぐに見積書を作り、クレジットの申込書を出して契約を迫ります。ですが、専門家が耐震診断をしたらその場で見積書を作ることはありませんから、そういう行為をしてきたら疑ったほうがいいでしょう。

補強の考え方


面倒でも取り組む


 耐震診断の結果、地震で倒壊の危険ありと判定されたお宅が、すぐ耐震補強工事に取り組むかと言えば、そうでもありません。なんとかしなければいけないのは、分かっているのですが、一方で面倒だという思いも湧き出てくるのです。

 理屈で、「生活の快適さよりも身の安全が優先」だと言われても、感情の部分では納得できないものです。ですから、耐震補強工事は信頼関係と納得のいく内容ができるまで、手間を惜しんではいけないのです。

できる範囲から


 専門家の方に相談し、補強計画を練っていくときに大切な事は、「どのくらい強くしたいか」を考えることです。根拠もなく、やみくもに耐震金物を取り付けていけば、建物のバランスが崩れて、かえって強度を弱めてしまう恐れがあります。

 阪神・淡路クラスの大地震に対してガラス1枚も割れない強度を期待するのか、建物のある程度の損傷は仕方のないこととし、ひと部屋だけシェルターのように倒壊を免れるようにすればいいのかで、工事の費用も内容もガラリと変わります。

 ただ、ちゃんとした業者に依頼し、業者の診断内容も正しく、工事単価も適正で悪質なものでもなく、補強計画も理想的な計画であっても、工事を依頼しない人はいるものです。

 なぜ、それでもやらないのかというと、大抵、工事の総額が予定していた予算をはるかにオーバーしているためです。理想的な工事でなければ、依頼しないという主張には疑問を感じざるを得ません。

 確かに予算には限度があります。ですから、耐震補強は予算の中で優先順位を考えて、できる範囲から実施していく必要があります。ベニヤ1枚でも、補強するにこしたことはありません。

業者との打ち合わせ(2)


工種別見積書と場所別見積書


 業者から提出される見積書は大別すると「工種別見積書」と「場所別見積書」に分類することができます。場所別見積書はリフォームなどの小さな工事に適した形式で、キッチン、浴室など、工事をする場所別に項目を分けてあります。

 工種別見積書は、木工事、左官工事、塗装工事などの工事の種類ごとにまとめられています。職人さん見積書といってもいいでしょう。新築工事の見積書は、ほとんどがこの形式です。

 どちらの形式でも、「一式見積もり」と「詳細見積もり」があります。この違いは、数量の拾い出しの細かさの違いです。一見すると、詳細見積もりが明朗会計に見えますが、単価は小さくても数を積み重ねていくと高くなることもあるので注意が必要です。

 一式見積もりはトラブルの元凶といわれますが、それは一式の中に何が含まれていて、どんな材料をどんな方法で工事されているのかが不明確になりがちだからです。トラブルを避けるためには、見積書に記載できない要素を図面、仕様書などで補うといいでしょう。

要望はしっかりと


 また、ISO9001と呼ばれる品質保証規格の認証を得ている業者では、依頼者の要求を文書に残すことになっているので安心といえます。業者から、こういった書面を出されない場合は、自分のほうから要求を書いた書面を渡しましょう。

 書き方としては、要望をそのまま書くといいでしょう。やって欲しい事とやって欲しくない事を明確に書いて、それに基づいて見積もりを作ってもらいます。そうすれば、お互いの誤解を防ぐことができます。

 耐震補強工事は、大抵、当初の予算をオーバーするケースが多いようです。というのも、工事をしていて、依頼者が「ついでにここも」とリクエストする場合が多いからです。

 追加工事が発生してもいいのですが、その度に必ず追加見積書を出してもらって、契約書か覚書をかわすことが大事です。

業者との打ち合わせ


複数の会社から見積もりを


 専門家からすれば、依頼者の期待する強度、費用、施工条件の3つの要素を合わせて、依頼者の合意を得てから見積もりを作成していくため、時間はどうしてもかかります。

 耐震補強工事の内容は分からないことが多くあります。何が必要で不必要なのか、一般の方は知りません。悪質業者は、そこにつけ込んでお金をとろうと考えています。

 しかし、建築の基礎知識がなければ、どれだけ業者から説明を受けても分からないと考える人もいると思います。そんなときは、複数の会社から見積もりをとりましょう。

 適正な金額を知る事ができますし、中には誠実な業者もいて、不必要な工事は意味の無い工事だと的確にアドバイスをしてくれます。誠実な業者と巡り会うためには、手間を惜しまないようにすることが大切です。

価格の安さだけで決めない


 また、業者を決めるときに気をつけることは「価格の安さ」だけで決めないということです。リフォームや耐震補強工事の内容を理解できないまま安価のみにひかれると、手抜き工事にあう恐れもあります。

 契約間際の大幅値引きをする業者は疑ったほうがいいでしょう。適正な価格を知ること、誠実な業者を見抜くことが相見積もりのポイントです。

 業者と打ち合わせをし、耐震補強工事の計画がまとまったら、次は見積書です。工事の発注にあたっては、必ず見積書をとり、納得してから契約書を取り交わしましょう。

 また、工事の内容を図面や仕様書にきちんと明記されているかどうか、耐震の効果を計算書によって証明されているかも確認するようにしましょう。

危ない業者を見抜く(2)


様々な商法(2)


■ついで商法

 「近くで工事をしているものですが、ついでだから安くやってあげましょう」などと訪ねてくる「ついで商法」も、よくある手です。実際は近くで工事などは、やっておらず、セールスと感じさせないためのカモフラージュです。

■見本工事商法

 「アンケートに答えてくれたら、特別料金になります」など、そのお宅が特別に選ばれた存在であり、料金も特別価格のように信じ込ませる方法です。ですが、実際には特別でも何でもありません。

■キャンペーン商法

 「今ならキャンペーン中なので、安価です」というのが正統派です。もっと手の込んだものになると、「もうキャンペーン料金ではないけど、特別に上司に頼んでみます」と言い、携帯で話しているような素振りを見せて、「よかったですね。なんとかなりそうですよ」と、恩着せがましく迫り、契約を急がせます。

■値引き商法

 はじめは高額な料金をふっかけて、後で大幅に値引きするというセールス法です。「今回だけですよ」「あなただけ特別に」「他の人には内緒ですよ」などと言ってきます。この手のセールスは大幅な値引きの後でも、標準以上の利益をのせているからできるのです。


 悪質業者は工事そのものでなく、悪知恵を働かせて法外な料金をとることで、収入を得ているので次々と新手のやり口を考えます。騙されたくなければ、見知らぬ訪問者が親切顔で来ても、玄関の扉を開けないことです。

 頼みもしないのに訪問してくる業者は、それ自体が怪しいと考えましょう。電話でしつこくセールスするのも同様です。

危ない業者を見抜く


様々な商法


 最近、詐欺まがいの悪質リフォームが社会問題になっています。そして、多くの方が騙されて大切なお金を取られているのです。そこで、危ない業者を見抜くポイントを紹介していきましょう。

■点検商法

 「屋根瓦を変えないと雨漏りがしますよ」「シロアリがいますよ」など不安を煽り、無料点検をするので上がらせて下さいと言ってきます。これは、点検商法と呼ばれ、家に上がらせて点検をさせてしまうと、大抵は法外な金額で工事の契約をする羽目になります。

 相手がどんな格好をしていても中身は同じで、口のうまいセールスマンです。善意で他の家を心配してくれる他人がいるはずがありません。狙いはお金といえます。

■次々販売商法

 家の屋根とかガレージとか外観をほめながら訪ねてくる営業マンもいます。ほめられて悪い気はしませんから、つい応対すると、「家の中も見せてください」と家にあがってきます。

 そして、その営業マンは次々にほめながら会話がはずみ、多少の親近感が生じると、本人は断るのが悪いような気になってくるものです。自分を納得させるために自分を欺く理由探しを始めるのです。

 こうなると悪質業者の思うつぼで、あとは耐震だけでなく、軽量屋根、瓦のシーリング、しっくい、外装など次から次へと契約を迫られることになります。

■かたり商法

 民間業者ではなく、公的機関であるかのように装ってアプローチしてきます。チラシや名刺には「○○耐震補強研究所」などと刷り込まれていたり、「県の○局から依頼されて‥」と名乗る者もいます。

 これは「かたり商法」と呼ばれるもので、最近はNPOの名称をつけた業者もいます。NPOは金銭を度外視した善人の集まりのように勘違いされがちですが、全てがそうとは限りません。NPOを騙る悪質業者がいることもあるのです。

工事契約の前に(2)


確認すること(2)


●全額支払わない

 国民消費センターへの苦情に「ずさんな工事」といったものが少なくありません。それを防ぐためにも、工事完了するまで全額を支払わないようにしましょう。

 悪質業者は約束よりもお金を優先させるため、工事が終わってなくても全額集金したらそのまま逃げる場合もあります。

●クレジット契約をしない

 クレジット契約が結ばれたら工事が終わろうが終わるまいが、支払いは始まってしまいます。本人自身がクレジット会社に支払い手続きを申し出るまでは支払われ続けます。

 クレジット契約をした時点で、支払いを拒絶することを封じ込められてしまいます。支払いを止めるだけでも、大変なクレジットは敬遠したほうがいいでしょう。

●十分な検討をする

 耐震補強やリフォームは個々の住宅によって必要な工事が千差万別です。費用を払ってでも設計事務所に工事監理してもらえば万全といえます。

 ですが、あまりにも小さい工事だと相談するのも気が引けますし、工事費に対して監理費用の割合も大きなものとなってしまいます。そういう場合、誰でもいいので信頼できる知り合いの方に相談しましょう。

専門家でなくても、第三者として冷静なアドバイスが聞ける可能性があります。とにかく、自分一人だけで決めないようにしましょう。

●相見積もりをとる

 リフォーム工事や耐震補強工事の価格が適正なものであるかどうかは、素人には判断しにくいものです。ですから、最低でも2社以上から見積もりをとって比べてみましょう。ただし、工事内容は同じでなければ意味がありません。

 
 間違いのない業者選びは、なるべく地元で事務所の所在が分かっていて、耐震補強工事の実績があるところがいいでしょう。あと、そこの社員が親身になって相談に応じてくれるようなら、なお良いと思われます。

工事契約の前に


確認すること


 工事を契約する前に、今一度確認しておくことがあります。以下にそのポイントをあげていきます。

●訪問販売業者に工事を頼まない

 訪問販売での勧誘は、本人が望んでない時点で業者が不安をあおったり、しつこく居座ったりして業者主導で無理やり契約させようとします。

特にリフォーム工事は、高額で簡単にはやり直しのきかないものなので、訪問販売では絶対契約しないという気持ちをもつことが大切です。

●怪しい業者の言う事を鵜呑みにしない

 「工事をしないと家が倒壊する」などと不安にさせることを言うのは、訪問販売の常套句です。不安を煽るような事を言った時点で疑うべきなのですが、どうしても不安なら別の地元の設計事務所や工務店に相談することです。

●書類を確認する

 契約の書類はもちろん、工事の材料や方法などの内容が分かる見積書を確認して下さい。また、工事箇所を記した設計図書、工期を書いた工程表も併せて確かめましょう。

●契約内容を確認する

 クーリングオフの説明はもちろん、途中解約した場合の支払額計算方法や不当工事に対する損害賠償などを確認しましょう。また、工事が始まっても期間内(クーリングオフできることを知らされた日を1日として、8日間)であれば無条件で解約できます。

 しかし、以下のような場合は訪問販売法に該当しないので、クーリングオフでの解約はできないので注意が必要です。

◇ 過去1年以内に、1回以上の取引をした店舗販売業者と訪問販売で契約した場合
◇ 過去1年以内に、2回以上の取引をした無店舗販売業者と訪問販売で契約した場合
(例えば、次々販売商法にひっかかった場合や、3つ目以降の工事など)
◇ 自分から業者に連絡し、契約することを前提に訪問してもらって契約した場合

マンション被害は築年数に比例するか(2)


1次設計と2次設計


 1981年の新耐震基準規定によって、鉄筋コンクリート造りのマンション安全性は格段に高められました。新耐震基準では安全のために2段階の構造設計をしています。1次設計、2次設計と呼ばれるものです。

 第1次設計では、中規模地震に対して深刻な被害が出ないように想定しています。中規模地震とは、震度5強の地震で、この程度の地震に対しては、建物の構造に深刻な被害が出ず、軽い補修程度で住み続けられることを目標にして設計します。

 第2次設計では、震度6程度を想定しています。この段階では、建物は壊れても一気に倒壊させず、建物内にいる人の命を守ることを最優先目標にしています。

 福岡県西方沖地震でのマンション被害は、この第2次設計が機能した結果といえるでしょう。そして大きな地震に遭遇しつつも、人命が助かったのは良かったといえます。

しかし、人は地震があっても翌日からは住む場所を確保し日常生活を再開しなくてはいけません。住民達が、嘆き悲しみ、怒り狂うのも無理のないことです。

地震保険の整備を


では、第2次設計の基準を引き上げ、震度6でも大丈夫な、強固な建物にしたらいいのかというとそうでもなく、これではマンションの建設コストの問題が高くついてしまうのです。

ですから、対策としてはこんな被害が出たときに役立つ地震保険を整備することだと思われます。現在の地震保険は制約が多く、保険料が割高なのに、ここぞという時に役に立たないため、加入率が低迷しているようです。

マンション被害は築年数に比例するか


強度の違い


 阪神・淡路大震災では、多数のマンション、オフィスビルが大きな被害を受けました。鉄筋コンクリート造りのマンションで被害が多かったのは、1階を駐車場や吹き抜けにし、柱だけで支えるピロティ式の建物でした。

 予測できなかったのは、建物の中間層が倒壊したことです。特に5階から10階建てくらいのマンションに多かったのですが、階の上下はなんともないのに、ひとつの階だけが潰れていました。

 阪神・淡路大震災で被害を受けたマンションは、大抵、建築年代に比例しています。ある調査で、1971年以前に建った第1世代マンションの無被害率は約40%、71~81年の第2世代の無被害率は約45%、81年からの第3世代の無被害率は約60%となりました。

 71年は、68年の十勝沖地震を教訓に、鉄筋コンクリート造りのせん断補強規定が強化された年です。81年は、78年の宮城県沖地震を受けて耐震設計基準が大幅に見直され、いわゆる新耐震基準がマンションも制定されました。

 木造家屋も同じですが、81年の新耐震基準以前の建物と以後の建物では、強度が相当間違っていることは明白です。

新耐震基準をクリアしていても


 問題は2005年3月に発生した福岡県西方沖地震で、築年数の新耐震基準をクリアしているはずの中高層マンションでも被害が出た事です。

震度6弱の揺れを示した中心部の比較的新しいマンションで、各戸のドアがゆがんで開かなくなったり、廊下の壁が崩れて部屋の中が見えたりなどの被害が伝えられました。

 新耐震基準をクリアした新しいマンションなのに、なぜそんな悲惨なことになったのでしょうか。(2)でそれを説明しましょう。

マンションを購入するときに


地震に対する安全性


 これからマンションを購入しようとする場合、地震に対する安全性を抜きにした選択は考えられません。近頃売り出している新築の高層マンションは、従来の耐震構造に加えて、免震構造とか制震構造といった安全性を売りにしています。

 中古マンションを選ぶ場合は、まず何年に建てられたかに注目しましょう。新耐震基準の81年以降のものであれば、一応安全です。ですが、それ以前の、特に71年以前の建物は慎重に選ばなければいけません。当時は、耐震に対するハードルが低かったからです。

 また、オイルショックやバブル時期に建てられたマンションは、資材不足と職人不足のため手抜きが多く、特に注意が必要です。

軟弱地盤のマンションに注意


さらに中古、新築を問わず地盤は大事で、軟弱地盤に建っているマンションは慎重に検討しましょう。

 とはいっても、一般の方が地盤調査をするのは困難ですので、簡単な方法を紹介します。ひとつは、地名からの判断で、「海」「川」「湖」「沼」「沖」「潮」「浜」「磯」「浦」「瀬」「潟」「洲」など、水にちなんだ地名は、かつての地形を表しているので、軟弱地盤の可能性があります。

 地盤調査のもうひとつの方法は、国土地理院の発行した「土地条件図」を閲覧することです。これには昔の地盤の高低も等高線で描かれているため、どこがどれだけ盛り土されたかも分かります。

 あと、1階が柱だけの空間だったり、店舗だったりするマンションも危険です。柱だけの空間をピロティと呼ばれていますが、1階が駐車場になっているマンションを指します。1階が店舗になっている下駄履きマンションもそうですが、1階の耐力不足は地震のときに致命傷になります。

 また、複雑な形の建物は地震に弱いとされています。やはり、四角形に近いシンプルな形を選択したほうがいいでしょう。

地震に強いマンション

耐震・免震・制震


 ここでは、地震に強いマンションのチェックポイントを考えていきましょう。

●耐震性の高い構造

 地震エネルギーに負けない強度を造る耐震構造は、大きく分けて剛構造と柔構造に分類できます。鉄筋コンクリート造りに代表される剛構造は、建物を変形させないことに主眼をおいて考えられています。

 もうひとつの柔構造は重量鉄骨造りに代表される構造です。しなやかに地震エネルギーを受け止め、揺れに抵抗せず、骨組みを崩壊から守るような構造です。この両方の特性を併せ持ったのが鉄筋コンクリートの柱や梁の中に鉄骨を入れた鉄骨鉄筋コンクリート造りです。

●免震構造

 建物の基礎の部分に積層ゴムやローラー支承と呼ばれる装置をはさみ、建物に伝わる地震の揺れの伝わり方を少なくする装置をもつ構造です。地震の加速度を直接、建物に伝えないので、通常の3分の2~5分の1程度に軽減され、震度が1あるいは2ランク程度小さくなります。

 欠点としては、建物重量が大きくなる高層の建物にはまだまだ制約があります。また定期的にメンテナンスが必要であり、設置費用も高くなります。

●制震構造

 地震のエネルギーを建物内の装置や部材で制御して揺れを抑えようとする構造です。大別して制震ダンパーと呼ばれる装置による方法と、振り子ダンパーによる方法があります。

 制震ダンパーはゴムや粘性の高い材料で揺れを吸収するタイプとブレースなどの鋼材の変形によって地震エネルギーを吸収するタイプがあります。マス・ダンパー方式はビルの屋上に液体の入った水槽や重りを吊り下げて、地震と反対に動いて建物の揺れを打ち消しあう装置です。

●適切なメンテナンス

 マンション購入のときに、重要なチェックポイントとして建物のメンテナンス体制があります。これは耐震性の維持には欠かせないポイントであり、ちゃんとした管理会社はメンテナンス計画を作成し、提案をしてくれます。

耐震補強の優先順位

現実的な補強を


 マンションを購入したときは新築でも、10年、20年と経過した年数に応じた劣化が現れます。そのため、耐震性確保を専門家に依頼することになるのですが、マンションの耐震診断は予備診断から三次診断と物件の規模や条件によっては数百万の費用がかかります。

 そこで、費用が高いからとか、理想的な耐震補強でないからと諦めず、現実的な補強をしていきましょう。例えば精密な耐震診断に割く費用を、弱い個所に優先順位をつけて、できる部分から重点的に補強する費用に充てればいいのです。何もしないよりは、はるかにいいと言えるでしょう。

優先順位をつける


 補強工事についても、「期待する強度」のレベルを調整すれば、おのずとかかる費用も調整されます。優先順位としては、

1、 損壊・倒壊を防ぎ人名を守る
2、 安全な避難、退避を確保する
3、 給排水、ガス、電気などの館内インフラにダメージを出さない
4、 資産価値を守る。復旧費用を極少に」抑える

 こうした優先順位のもと、可能な対策を検討すればいいのです。また、新工法も開発されています。

これまでピロティの独立柱の補強は鋼板巻きが主流でしたが、高強度樹脂製のベルトを巻きつけて強度アップを図る工法ではそれまでの費用の半分から3分の1程度の費用で補強が可能になりました。

 ただ、こうして費用面で耐震補強の現実味が出てきても、「まだ起きてない地震のためにお金を出したくない」と言う人を説得するという問題が残っています。こればっかりは、耐震の必要性を理解している人が熱心に語りかけていくしかありません。

土地の過去を知ること

洪積層


 もし、これから宅地を探す場合は、まずはしっかりした地盤の土地を見つけることです。過去の地震を調べてみると、谷や沢を埋め立てた造成地に被害が多い事がわかります。

 そこで国土交通省では、造成地がどんな土地だったかがわかる「防災マップ」を作成し、住宅地を購入するときの参考にしてもらおうという計画を始動させることにしたようです。

 では、どんな地盤なら安全と言えるのでしょうか。安全なのは1万年から2000万年前に出来上がった固い地盤の洪積層です。山に近い丘陵地や台地に多い地層ですが、現実にはそのままの形では存在していません。

 都市の周辺に広がる丘陵地、台地は宅地造成のために削り取られたり、埋め立てられて人工的な地盤に変わってしまっています。都市郊外で見られるひな壇状の住宅地がそれで、山側の斜面を削り取り、谷側に造った擁壁の中に土砂を埋め戻して、平らな土地を造成します。

 結果として、ひとつの敷地内に削り取られたあとの固い地盤と、盛り土をした柔らかい地盤が混在します。これは、人工的にわざわざ不同沈下を誘発する地盤を造ったようなものです。

沖積層


 他にも沖積層と呼ばれる土地が、軟弱で不安定な地盤です。多くの都市は平らな地形の河口や海沿いに発展してきたので、大半が沖積層の地盤の上に成り立っています。

 また、海、川、池、沼、谷などの埋立地は、非常に悪い地盤です。下を水が流れ続け、長い年月をかけて地盤沈下する可能性が高いといえます。あと、付近に水を大量に使う工場がある地域も注意が必要です。地下水の汲み上げで、地盤沈下を招く恐れがあります。

 地震に不安を抱かずに生活するためには、良い地盤の土地を見つけることが大切です。

弱い地盤に対しては

地盤の調査


 住宅は良好な地盤を選んで住宅を建てるケースばかりではありません。先祖から受け継いだ土地や現在の土地に建て替える場合は地盤を選択できません。そういう場合は、地盤の性質を調査で知ることから始めます。

 2000年の建築基準法改正によって木造住宅にも事実上地盤調査が義務付けられました。その内容は、地耐力に応じて基礎構造が規定されるというものです。地耐力とは、地盤が長期にわたり支持可能な接地圧のことです。

 つまり軟弱な地盤だから家が建てられないというのではなく、調査をしてその地盤に弱点があれば、基礎の仕様、地盤改良、杭工事などで対策を講じます。

基礎・構造に重点を


 自分の理想どおりのマイホームを建てようと思っても、予算が不足していれば、どのように配分していけばいいのかが悩みの種になります。そんなときに犠牲になりがちなのが、基礎や構造に関する予算です。

 もし依頼者が外見を優先すれば、基礎や構造がおろそかになり、思わぬ結果を招く恐れもあります。もし、基礎が適切に造られなかったら、不同沈下など地盤や基礎に重大な欠陥が現れることもあります。

 必要不可欠な基礎や構造の確実な設計をするには、まず地盤の調査が始まります。調査にかかる費用は30坪くらいの土地の場合5万円くらいを見込んでおきましょう。

マイホームを建てるときは、外見や内装、調度品に予算をかけがちですが、目に見えない地盤や基礎に予算をかけたほうがいいでしょう。

様々な工法・構造(2)

メリット・デメリットを把握する(2)


■軽量鉄骨工法(鉄骨系プレハブ造り)

 軽量鉄骨工法は柱と梁のほかに壁にブレースを入れて建物の強度を保っています。メリットは、鉄骨系に限らずプレハブ住宅は熟練した職人が不要で品質が安定していることです。

 デメリットは鉄骨は地震や風のエネルギーに対して粘り強く柔軟に対応できますが、そのよさが裏目にでます。軟弱な地盤では地震の揺れと共振しやすくなることや、日常的に風や自動車の振動などで建物が微動しているのも気になるところです。

■重量鉄骨造り

 この工法は町の工務店で採用しているところが多く、従来の木造住宅と並んで普及しています。肉厚の柱と梁を組み合わせて強度を保つラーメン構造が、ほとんどなため間取りは自由にとれ、大きな空間を造ることもできます。

 メリットは改修工事が楽なことで、柱と梁の骨組みさえ残しておけば、なかの間仕切りは全てやり変えることができます。それに鉄筋コンクリート造に比べ、建物が軽いので基礎や杭工事が低価格ですみます。

 デメリットは溶接の技術水準によって品質が左右されることです。熟練した職人の確保と十分な品質管理が必要です。また、在来の木造住宅に比べて耐震性や耐久性に優れている反面、コストが高いというのも欠点のひとつです。

■鉄筋コンクリート造り

 引っ張る力に強い鉄筋と、押し潰す力に強いコンクリートを組み合わせた工法です。かごのように曲げた鉄筋を型枠で囲み、そのなかにコンクリートを流し込んで柱や梁を形成していきます。

 施工上の注意点としては、コンクリートの品質管理、鉄筋の組み方など技術的な施工管理が品質を左右します。コンクリートは一旦固まると、やり直しのきかない難しさがあります。

 メリットは耐火性、耐久性、機密性、デザイン性に優れていることです。デメリットは、そのままでは断熱性が悪く増改築が困難なことや、建物の重量が重くなるので基礎の杭工事に費用が多くかかることなどです。

様々な工法・構造

メリット・デメリットを把握する


 戸建のマイホームを持とうとする場合、現在では様々な工法・構造を選ぶことができます。それぞれ、メリット・デメリットがあるので、好みやライフスタイルを考えて選択するようにしましょう。

■木造軸組工法(在来の木造)

 町の工務店が建てる在来の木造住宅です。わが国でも長年採用されてきた伝統工法で、まず柱、梁を組み、その上に屋根を仕上げます。

 この工法のメリットは、木材を使用するので材料の加工をしやすく、軽い建物を造ることができ、コストも比較的安価に抑えることができます。バランスよく耐力壁を配置し、適切な接合方法がとられていれば耐震性も十分保てます。

 デザインの自由度が高いので大小様々な形の建物が建てられ、増改築も比較的容易です。そして、木の風合いを好む日本人の趣向を満たしてくれる住宅です。

 デメリットは、職人の実力で仕上がりにばらつきができることです。それに時間を経るにつれて発生する材木の反りや狂いは避けることができません。

■ツーバイフォー工法

 アメリカやカナダで発達した工法で、2インチ×4インチの部材を主な骨組みに使用するのでツーバイフォーと呼ばれています。この工法は、柱や梁で建物の強度を保つのではなく、合板(ベニア板)の床板や壁によって強度を確保しています。

 メリットとしては、耐震性が高く気密性も高いので断熱性に有利なことと、熟練した職人技が不要で工期は短くてすみます。

 デメリットは、間取りに制約を受けることで、大きな開口部が取りづらく、広い空間は造りにくい構造です。壁で建物の強度を確保しているので増改築には不向きと言えるでしょう。

材質を上げる

コンクリート


 伝統的な木造住宅でありながら、決められた耐震基準を超えるマイホームにしたい場合、コンクリート、木材など家の材質をワンランクアップさせましょう。

 基礎のコンクリートについては、水に対するセメントの比率を標準よりも増やすことで強度をアップさせます。セメントを増やしたといっても、コストアップは1㎡あたり数百円から1000円程度です。仮に10㎡としても、1万円程度のアップです。

土台と柱の木材


 次には土台と柱の木材をランクアップさせ、浸透させた注入土台を使用します。ツガよりは、ヒバ、ヒノキ、クリなどが耐腐巧性、耐蟻性が高いとされているのでお勧めです。また、105ミリ角の太さを使用する予定なら、それを120ミリにランクアップすることで強度は大幅に向上します。

 柱も同様に、スギからヒノキの順にランクアップしていきます。ヒノキは香気が高く、木目がまっすぐで見た目がいいだけでなく丈夫で長持ちします。さらに105ミリ角の柱を120ミリ角にすれば地震に対する安全度は大幅に上がります。

 また、柱に関して言えば、スギ3.5寸のグレードからヒノキにグレードアップするのに8万~12万程度、総4寸角のヒノキに換えても18万~25万円程度の予算を見込むだけです。

 柱や土台などの構造材に比べ、あとで交換可能なキッチン、ユニットバス、洗面化粧台、給湯器のグレードを1ランク下げるだけで50万~80万は減額できます。

 新築のときしか変更できない構造材をグレードアップしておき、リフォームでも交換可能な住宅設備機器や照明器具などを抑えた予算配分が賢明だと言えるでしょう。

新築の耐震補強

屋根・浴室


 地震に強いマイホームを造るためには、過去の地震で被害を受けやすかった要素をひとつひとつ排除し、足りない要素を補っていくことです。

 屋根は過去のデータから見れば重い屋根は明らかに地震に弱いことが判明しています。ですから、伝統的な日本瓦よりは軽いカラーベストや鋼板の屋根がおすすめです。

 防水に不安のある浴室の一番の解決方法はユニットバスにすることです。タイル張りがいいという方は、浴室の腰部分を鉄筋コンクリートで施工し、しっかりとした防水施工と湿気が逃げないような防湿対策をします。

 浴槽に水を張った場合、相応の重量になりますので、充分な補強をするか1階に設置するほうが安心です。

ベランダ・家具


 2階のベランダは、一見しっかりと強そうに見えるコンクリートの床は、重量が増して非常に危険です。そこでFRP防水やステンレス防水、あるいはアルミ製のベランダにすれば安全です。

 また、家具については新築にあわせて全て造りつけにしたほうがいいでしょう。あとから家具の転倒防止のために苦労するよりも、最初から転倒するような家具がないのが一番です。

 様々な部位で耐震性の向上を上げることも効果的ですが、メンテナンスのための工夫もしておきましょう。基礎の幅は厚くして、基礎パッキンや高気密・高断熱工法で換気口を設けないことも大事です。

 また、床下収納庫を設置すればいつでも簡単に床下の点検ができます。内部の基礎には人通口(人が通るための穴)を計画しておくといいでしょう。

耐震リフォーム業者選び

業者選び


 ハウスメーカー、住宅会社の選定はカタログ、モデルハウスなどを参考にすれば情報は手に入りますが、ここでは情報を得にくい普通の工務店、設計事務所をどのように選んだらいいのか考えてみましょう。

■得意とする工法

 例えば木造に本領を発揮する大工さんに鉄筋コンクリートの建物を建ててもらうよりは、鉄筋コンクリートに実績のある施工会社にしたほうがいいでしょう。

■建物と会社の規模のバランス

 ビルなどの大きな物件には大きな会社、一般の戸建住宅には町の工務店という組み合わせが予算的にもアフターサービスの点でも最適といえます。

■営業マンの知識・応対

 規格住宅ならともかく、注文住宅で現場経験がほとんどない新人営業マンでは、細やかな対応は難しいかもしれません。質問に対して一貫した回答ができるかどうか、分からないことでも誠実に対応してくれるかをみましょう。

■施工現場を見せてもらう

 モデルハウスを持っているから良い会社とは言えません。モデルハウスの建築費、維持管理費などの営業経費が価格に上乗せされていることは常識です。モデルハウスを持っていない工務店も過去の物件や現場見学会で作品を確認しましょう。

■施主の評判を聞く

 引渡しが済んだお客さんにその会社の評判を聞いてみましょう。建物の出来映えだけではなく、顧客に接する会社の姿勢が見えてきます。

■アフターメンテナンス

 建物は引き渡し直後から劣化や磨耗が始まります。一番良いのは依頼者のことをよく知っている、実際造った人がその後ずっと面倒を見る体制です。依頼者の住み方から気に入っているものまで知り尽くした人が、ちゃんと記録を残しながらメンテナンスをすれば安心といえます。

■後継者の存在

 アフターメンテナンスを継続するためにも、その会社が存続していることは重要な点です。小さな会社や工務店は不況のときでも意外と倒産はしないものです。意外と従業員の多いところが苦しい場合があります。

 ただ、小さな工務店の問題は後継者の存在です。現社長が高齢の場合、次は誰が依頼者の住まいの面倒を見てくれるのかということになり、後継者の存在は見過ごされていますが重要なポイントといえます。

2次災害を防ぐ免震


建物が頑丈であるほど被害が大きい


 従来、建物の耐震の基本的な考え方は、どのような地震力にも耐えられる頑丈な建物を造るという、力には力という発想でした。地震との共振によって生じる大きな力にも耐えられる建物を造ろうというものでした。

 ですが、阪神・淡路大震災のような大地震では建物が完全に無傷であることは困難です。さらに、建物を頑丈にすればするほど地震の2次災害が大きくなってしまうという矛盾を含んでいます。

免震について


 これは、自動車事故での車体の頑丈さと乗っている人の安全性の関係に似ています。昔の車は車体が頑丈にできていて、少々のことでは壊れませんでした。ですが、その結果、車の損傷は小さいのに乗っていた人が亡くなる衝突事故が多発しました。

 そこで現在の自動車は、衝突時に衝突箇所が比較的簡単に壊れるように設計されています。衝突のエネルギーを、それが搭乗者を傷つける前に、なるべく自動車の破壊で消費させようとするものです。これと同じ事が地震時の建物についても言えます。頑丈な耐震建築ほど2次災害を大きくしてしまいます。

そこで考え出されたのが「免震」です。建物が地震動と共振するのを避けることで、地震エネルギーが建物に加わるのを遮断します。それでも加わる小さな地震エネルギーは、ダンパーで減衰してしまいます。すなわち、激しい揺れを免れるから免震なのです。

阪神・淡路大震災では免震ビルには被害が少なく、屋内でも家具類の転倒や飛散もなく、テーブル上の物が倒れることもあまり無かったようです。このことからも、免震建築では地震の2次災害は、ほとんど起こらないと言えるでしょう。

免震建築


建物の免震化


 日本では1985年からの20年間で、約1200棟の免震ビルが各地に建設されています。最初は建設会社の自社研究棟や寮などに試験的に導入され、続いてコンピュータ・センターなどへも適用されました。

 しかし最初の10年間では、約50棟の免震ビルが建てられたに過ぎませんでした。それが阪神・淡路大震災を境に急成長しました。災害対策に直接関係し、かつ公共性の高い建物、例えば救難、医療、消火などの施設、学校などの避難所、一般官庁施設などに積極的に採用されつつあります。

 また企業でも、本社ビルやコンピュータビルなど、地震が起きても機能し続けなければならない建物の免震化が急速に進みつつあります。近頃の具体例としては、新首相官邸、国立西洋美術館、愛知県豊田市庁舎などがあります。

 またマンションの免震化も進みつつあります。多世帯の住むマンションでは、免震化に伴う一世帯当たりのコストアップが比較的少なくてすみます。また、マンションを免震化する場合は、一般ビルに比べ軀体の強度をある程度低減させてもよいことが認められているため、全体としてのコストアップを抑えることができるからです。

レトロフィット免震


 すでに建っている一般建築物の免震化(レトロフィット免震)もさかんに行われるようになりました。これは、難しそうですが意外と簡単な工事です。

 まず既存ビルの基礎の部分をチェーンソーで切断した後、いったん建物を隣の敷地に曳き屋(移動)しておきます。そして基礎の部分だけを作り直して免震装置を設置した後、再び建物を曳き屋して元に戻すのです。

 アメリカではレトロフィット免震による歴史的建造物の保存が活発です。コスト的にも、新築の免震ビルより既存ビルの免震化のほうが安上がりといったメリットもあります。

地震の力


加速度


 地震のときに建物に加わる力を「地震力」や「地震荷重」といいます。地震によっては建物に加わる水平方向の力は建物が重いほど、また地震で生じる加速度が大きいほど、大きくなります。

 加速度とは速度の変化のことで、速度が1秒間にどれくらい変化するかを表し、1cm毎秒毎秒が1ガルです。実際の地震の加速度は、一方向に単純に繰り返す力ではなく、いろいろな周期や大きさ、方向の加速度が混じっています。

降伏点


 一般に地震動の垂直方向の加速度は、水平方向の加速度の5分の1~10分の1程度です。本来、建物は建物自体の重さや家具などの重さを支えるように設計されているため、上下動に対しては十分強くできています。

 建物は横から押されると少しずつ傾いていきますが、軒の高さで1~2cm傾く程度までは力を取り去ると傾きは完全に元に戻ります。

しかし、加えられる力が大きくなって、家の傾きがある限界以上になると、力を取り去っても傾きは完全には元に戻らなくなり、変形を残したままになります。この限界のことを「降伏点」といいます。

一般的に建物は、かなり降伏点を超える変形をしても、それだけでは倒壊しないようにできています。ですが、その程度の変形量でも何回も繰り返すと建物の傾きは次第に大きくなり、やはり倒壊してしまいます。

よって、地震で建物が倒壊するのは1回でも非常に大きく変形したか、それ程大きな変形ではないのですが、降伏点を超える変形を繰り返したケースといえます。

地震の揺れ


固有周期


 建物に加わる地震力は、建物が地震波と共振するかどうかで違ってきます。共振しない場合は単一の衝撃力となり、共振する場合は繰り返しの振動に伴って増幅される衝撃力となります。

 1回の振動に要する時間を周期といい、1秒間の往復回数を振動数といいます。どれくらいの周期で振動するかは、それぞれの物によって決まっています。その物体固有の振動周期を固有周期といいます。

 建物にもそれぞれ固有周期があります。木造住宅の固有周期は0.25~0.3秒程度、4~5階建てのコンクリートビルの固有周期は、およそ0.25秒です。

建物の揺れ


 全ての物体はその固有周期と同じ周期の振動に対しては、共振を起こし、振動がどんどん大きくなるという特性をもっています。全く同じ事が、地震の振動と建物の間にも起こります。

 建物は、地震波の中のその建物の固有周期と同じ周期の成分からは共振するような加速度を受け、異なる成分からは単なる成分からは単なる衝撃力を受けます。

つまり、地震によって建物が被害を受けるかどうかは、地震波自体の強さに加えて、建物と地震波との共振の程度によって決まるのです。共振による振動増大の程度は、共振する周期の振動が一度だけ入力されてもそれほどは大きくなりませんが、連続的に繰り返されると大幅に増大します。

 実際の地震波では周期も振幅も異なった振動が入ってきます。建物の固有周期と同じ成分が連続的に来ると、建物の揺れは大幅に増幅されます。ですが大きく揺れようとした瞬間に、まったく別の周期の振動が来る場合は、増幅は小さくなります。

免震構法と制振構法


制振(制震)構法


 近頃耳にする耐震技術のひとつに制振(制震)構法というのがあります。免震では共振を避けることが主な目的ですが、制振では共振を仕方ないこととして受け入れます。その代わりに大きな減衰機能を持たせることで、地震波との共振によって建物に生じた大きなエネルギーを減衰させる構法です。

 例えば、建物の壁や梁にダンパー(減衰器または吸振器)を挟み込み、建物の揺れに応じてダンパーも変形するようになっています。変形が大きくなるほど減衰効果も大きくなるので、地震の大きさに応じて建物の揺れを減衰させることが可能です。

 制振は共振に対する対策というわけではないので、免震と比較すると耐震効果としては小さいといえます。ですが、地震波の周期に関係なく、どの周期の振動でも減衰させる効果があります。

 また、比較的容易に施工できるため、既存の建物を耐震化するのに便利といえます。

スロッシング現象


 制震のひとつとして、建物の頂上部に重量物を取り付ける方法もあります。これは、机の上に金魚鉢を置いた状態で机を揺すると、金魚鉢の中の水が机の動きと逆方向に動いて(スロッシング現象)、机の動きを止めるように作用する原理を利用したものです。

 実際には、ビルの頂上部に水槽の代わりに動きやすい重量物を置き、重量物がビルの揺れと逆方向に動くことを利用してビルの揺れを軽減させています。

しかし、これはもともと強風時のビルの揺れで住人が船酔いに似た不快感を覚えることへの対策として開発させたものです。

免震ゴム

免震ゴムの特性


 建物をある種の装置の上に載せることによって、水平方向には小さい力でも動くようにした構造体が免震建築です。このような免震の考え方は、100年以上も前に提案されており、最初のアイデアは建物を丸太や雲母板のような滑りやすいものの上に載せるというものでした。

 しかし、この方法を建物に適用した場合、地震の揺れが大きくなると、建物の動く距離が非常に大きくなり、なおかつ動いた後はそこに止まったままになります。こうなると、地震後には建物が隣の敷地に移っていたということにもなりかねません。

 この問題を解決したのが、1970年代にフランスで登場した免震ゴムです。免震ゴムはゴムと鉄板を交互に数十層積層し、接着させたサンドイッチ構造体で「積層ゴム」とも呼ばれます。

 免震ゴムの最も優れた特性は、水平方向には非常に軟らかく、垂直方向には建物を支えても沈み込まない充分な硬さをもち、変形後には建物を引き戻すバネの働きをするという点にあります。

上下方向には効果はない


 しかし免震ゴムは原則として、上下方向には軟らかくせず、上下方向の地震動に対しては免震効果はありません。これは、一般に地震では上下方向の震動は水平方向の5分の1~10分の1程度と小さいことに加えて、全ての建物は上下方向には非常に強くできているため、地震の上下動では破壊されないからです。

 もしも、上下方向も免震化するために免震ゴムの上下方向の硬さを軟らかくすると、長期間建物を支えている間に、免震ゴムは垂直方向に大きなクリープ現象(へたり)を起こします。

また、地震時には建物がロッキング(上部のムチ振り現象)を起こして踊りだす危険性があります。そういった理由で、水平方向にだけ免震化されているのです。

共振による揺れを吸収するダンパー

ダンパー(減衰器または吸振器)


 免震が地震との共振を避けるだけで充分なら、免震ゴムがあればいいのですが、それだけでは地震の加速度を小さくできても建物の水平方向に動く距離が非常に大きくなってしまい、免震ゴムが破断してしまうことがあります。

 そこで免震建築では、バネの働きをする免震ゴムに加え、わずかに共振した地震エネルギーを吸収し、建物の動く距離を小さくする装置を併設する方法が用いられます。このようなエネルギー吸収装置をダンパー(減衰器または吸振器)といいます。

3つの方式


 免震構法では、ダンパー機能を持たない免震ゴム(低減衰免震ゴム)とダンパーを組み合わせて設置する場合と、あらかじめダンパー機能を付与した免震ゴムだけを設置する場合とがあります。

 前者では、低減衰免震ゴムとダンパーを建物と基礎の間に並列に設置します。一方、ダンパー(減衰)機能を併せ持つ免震ゴムには2種類あります。

ひとつは低減衰免震ゴムの中心部を円柱状にくり抜き、この部分に減衰性の高い鉛棒を封入した「鉛入り免震ゴム」です。もうひとつは、特殊な配合薬品を混合することによって、ゴム自体が高い減衰性を持つようにした「高減衰免震ゴム」です。

 一般的に、コストをかけられる公共施設では「低減衰免震ゴム+ダンパー」を使用する場合が多いようです。コストを重視する場合は、高減衰免震ゴムか鉛入り免震ゴムとなります。現状は、日本でこの3つの方式がそれぞれ、3分の1ずつのシェアになっています。

免震ゴムの特性

優れた柔軟性


 免震ゴムの優れた特性は、まずゴム自体の硬さが、ちょうど建物の水平方向の固有周期を3秒程度にするのに適する軟らかさを持っている点にあります。そして、垂直方向の硬さは、鉄板間のゴムの厚さと直径を変えることによって設計できます。

 さらに、ゴムはコイルバネと同じように力を取り去ると瞬時に元の形状に戻ります。そのため、免震ゴムは地震時には水平方向に変形し、地震後には建物をほぼ正確に元の位置に引き戻す働きをするのです。

大きな変形が可能


 免震ゴムの優れた特性は、非常に大きな変形が可能だということです。大地震のとき、地面は水平方向に50cm以上も動きます。

このため、地面に固定された一般の非免震建物は地振動に追随して同じ水平方向に激しく動くとともに、共振によって建物の上階はさらに激しく揺すられることになります。そのため、建物自体が大きく変形してしまいます。

一方、免震建築では地面の動きに対応して免震ゴムが大きく激しく動くことで、上に載った建物は地振動から絶縁されます。その結果、建物は水平方向に大きく、ゆっくり動きますが、建物としてはほとんど変形しません。

当然、このことは免震ゴムに非常に過酷な変形を強いることを意味します。この変形によって鉄板間に挟まれたゴム部は300~400%剪断変形を受けることになります。

免震ゴムは、水平方向に繰り返し50cm程度変形しても、破壊しないように設計されています。しかも、そのように大きく変形してもゴムは瞬時にほとんど変形前の状態まで戻るので、地震後には建物を元の地点に戻してくれるのです。

免震ゴムの耐久性

60年の耐久寿命


 免震ゴムの優れた特性のひとつに、長期耐久性とメンテナンスフリーがあります。一般に、コンクリートビルの耐久寿命は60年と言われます。そうなると、免震ゴムにも同じ60年の耐久性が求められます。

 では、そもそも免震ゴムの耐久性とは何でしょうか。言うまでもなく、どのような工業製品も、そのまま冷蔵庫の中に入れておくだけでは半永久的に変化しません。

 その製品をある実際の使用環境の下で、ある必要な負荷を加えた状態で使用するので、ある時間後には最早、それ以上使用できない状態になります。当然、使用する環境条件が厳しく、負荷が大きいほどその製品の寿命は短くなります。

 免震ゴムの耐用年数を考える場合、まず負荷条件としては、免震ゴムは常に建物による垂直荷重を支えており、地震時には建物を背負ったまま、水平方向に繰り返し大きく変形します。

 この負荷により、免震ゴム内には大きなひずみや応力が発生します。その結果、免震ゴムの内部では少しずつ破壊が進んだり、横方向の硬さが変化したりします。

 免震ゴムの場合、負荷による変化としてもうひとつ、クリープが起こります。これは、常に大きな垂直荷重を支えているため、免震ゴムが少しずつ沈み込む現象であり、へたりとも言われます。

 大きなクリープは建物の垂直方向の沈下を引き起こし、最悪の場合、建物全体が不均等に沈み込む不同沈下をもたらします。環境条件としては、大気中に置かれるゴム材料は酸素やオゾン、紫外線と反応することにより、表面から少しずつ破壊が進行したり、水平剛性も変化します。

 以上の2つの条件下における経年変化により、免震ゴムも性能は低下し、やがて最初に定めた設計基準の下限値以下になってしまうのです。

 免震ゴムの長期耐久性は、特に日本では免震ゴム開発当初から不可欠の項目とされました。そして寿命60年の免震ゴムが開発されたことで、免震ゴムが真に実用的免震装置になったのです。

戸建て免震住宅

免震住宅の仕組み


 戸建て免震住宅には、標準的な大きさの住宅の場合、建物の重量を支える免震支承が約15基、バネの働きをする免震ゴムが約4基、ストッパーが約8基配置されます。

 免震構造では、建物の全荷重を免震支承が点支持で支えます。このため木造住宅を免震支承の上に直接載せると、土台(木土台)が変形、破損してしまいます。そこで木土台の下に剛性の高い鉄の枠組み(鉄骨架台)を置き、点支持の荷重を分散させて木土台に伝えるようにします。

 このことは基礎に対しても同様で、荷重を分散するために配筋補強されたベタ基礎を使用します。免震支承や免震ゴム、ストッパーなどの免震装置は、建物の重心や偏心及び各柱にかかる軸力などを考慮してバランスよく配置し、下側を基礎に、上側を鉄骨架台のボルトで固定します。

 最後に、建物を鉄骨架台の上にボルトで固定します。こうして、基礎から建物まで一体の免震構造になります。

住宅建設の流れ


 住宅会社が木造軸組住宅を建設する場合の、非免震住宅と免震住宅での建設の流れの違いを挙げていきましょう。

□従来型の非免震住宅

1、地盤調査・スウェーデン式サウンディング試験
      ↓
2、間取り決定
      ↓
3、柱・壁の配置設計
      ↓
4、施工
      ↓
5、完成・引き渡し

□免震住宅

1、地盤調査・スウェーデン式サウンディング試験・ボーリング試験
      ↓
2、間取り決定
      ↓
3、免震構造計算
     ↓
4、施工
     ↓
5、完成・引き渡し
     ↓
6、維持管理・点検

免震住宅の建設

建設の流れ


 ここでは、免震住宅の建設の流れをみていきます。免震住宅の建設の流れは、いくつかの点において非免震住宅とは違いがあります。

まず、非免震住宅の場合と同じく敷地調査を行い、スウェーデン式サウンディング試験の他にボーリング試験が必要になります。建設が可能となれば、設計者は建て主と間取りの相談をします。

 免震住宅の設計では、まず免震のための構造設計を行います。今後に起こると予測される最大の地震で、その住宅がどのように揺れるかを計算し、それに対して十分な効果が発揮できるような免震構造を設計するのですが、これこそが免震住宅建設の要です。

 施工段階では、基礎に各種の免震装置を配置し、その上に鉄骨のフレーム(鉄骨架台)を組みます。そして、このフレームの上に建物(上屋)を組み立てていきます。

 免震住宅では、地震の際に基礎と鉄骨フレームに載った上屋が分離して動きます。そのため上屋と基礎にまたがる全ての配管、配線には自由に曲がりくねることができるフレキシブルジョイントが使用されます。

 そして完成し、建て主に引き渡された後も、長期にわたって免震装置の維持管理のための定期点検が続けられます。さらに、その地域に大きな地震はもとより、風水害が襲った場合にも臨時の点検が行われます。

 このように免震住宅には、独特の技術要素が数多く組み込まれています。これほど丁寧・慎重に造られている点だけでも価値の高い住宅と言えるでしょう。

ボーリング調査

地盤の特性に関する情報を得る


 免震住宅でも同様の調査はもちろんですが、さらに地震の応答計算を行うため、もう少し深いところまでの地盤の特性に関する情報が必要になります。地盤の深いところまでの情報を得るには、ボーリング試験を行います。

 同時に「標準貫入試験」と呼ばれる打撃試験も行います。ロッドの先端を規定の深さまで貫入させるのに必要な打撃回数(N)によって土の固さを求めます。もっとも軟らかい土がN=0、もっとも硬い土がN=50と表示されます。

 その地盤で発生する地震波(サイト波)を求めるには、地表面からN=50の土(工学的基礎)に達するまでの地盤(表層地盤)の情報がないと計算できません。

 ちなみに住宅の場合、それぞれの敷地でボーリング調査をするのは費用の面で難しいと言えます。そこで、一般的にはその敷地でのボーリングは行わず、周辺の地盤情報を総合して地盤性状を推定します。

 そうした当該地周辺のボーリング情報は、市町村で公開している地盤情報がある場合は、これを利用します。それが無い場合は、建設地周辺にあるビルを探し出し、その地方の役所に行って、そこの地盤情報を得ます。

 この場合、個人のプライバシーや特定企業の利益に供することになるなどの問題があるとして、情報提供を拒否する役所も多いようです。

 そのようなボーリング情報も得られない場合は、最後の手段として当該地でボーリング試験を行います。通常、ボーリング、1メートルにつき約1万円必要になります。

軟弱地盤ほど地震の揺れは大きい(2)

地盤と地震波の共振


 地震波は様々な周期の波の複合体ですが、このような波がある地盤に入った場合、波の各周期成分は地盤の周期に合わせて共振し、増幅されます。なかでも、その地盤の卓越周期またはそれに近い周期と等しい周期成分は、特に大きく増幅されます。これを地盤と地震波の共振といいます。

 したがって、硬い地層を通った地震波では短周期成分が強く増幅され、軟らかい地層を通った地震波では長周期成分が強く増幅されます。そのため、地表面に達する地震波の周期特性は、硬い地盤では短周期成分が強く、軟らかい地盤では長周期成分が強いという傾向を持っています。

ムチ振り現象


 地盤による地震波の増幅というのは、このような共振現象に加えて、もうひとつ増幅のされ方が硬い地盤に比べて軟らかい地盤のほうが大きいという特性があります。これは一般に「ムチ振り現象」として次のように理解されています。

 ここで地表面から地中に向かう2本の地層の柱を想定してみます。柱の根元は硬い工学的基盤でできていますが、工学的基盤から地表までは、固い地層でできている柱Aと、軟らかい地層でできた柱Bがあるとします。

 この2本の柱の根元を支点として同じように揺すった場合、柱のムチ振り現象によって、地表面の加速度は柱Bのほうが大きくなります。このように2つの増幅作用により、軟らかい地盤で起こる地震波は硬い地盤の地震波に比べて卓越周期が長く、その加速度も大きくなります。

 このように、地震波の大きさや卓越周期は、その敷地下の地盤の硬さによって大きく左右されます。そこで免震住宅の建設にあたっては、地盤の調査が必要不可欠になります。

軟弱地盤ほど地震の揺れは大きい

地盤の硬さ・軟らかさ


 地盤の軟弱度によって地盤の揺れの大きさが異なってくるのはどうしてでしょうか。これについて次のように考えてみましょう。

 震源で発生した地震波が地層の不連続面に到達すると、反射、屈折、透過などを起こして、波形が変化していきます。

特に硬い地盤から軟らかい地盤への不連続面では、硬い地盤と地表面の間、すなわち表層地盤の上下端で反射が繰り返されて、地震波の振幅が増加していきます。これを「地盤による地震波の増幅作用」といいます。

 重要なことは、地盤の硬さによって増幅のされかたが違ってくるという点です。この増幅作用は、「地盤と地震波の共振現象」と「地盤のムチ振り現象」という2つの現象の複合効果によってもたらされ、これにより、軟弱地盤ほど大きな地震動を生み出し、建物の被害を大きくするのです。

 全ての物体がそうであるように、地盤もその硬さに応じた固有周期を持っています。ただし地盤の場合、地盤の構成要素が複雑なため、単一の固有周期ではなくて、多くの周期の複合になっています。そのうち最も強い周期を「地盤の卓越周期」と呼びます。

 一般に、洪積層地盤の卓越周期は0.2~0.3秒程度、沖積層が厚く積もった地盤は0.7秒以上の卓越周期をもっています。

 洪積層は、およそ1万年前より古い時代に作られた硬い地層です。沖積層は、およそ1万年前から現在までの間に堆積された軟らかい地層です。したがって、軟弱地盤というのは、沖積層が厚く堆積した地盤のことを指しています。